【深夜特急(沢木耕太郎・著)】バックパッカーの不朽の名作を読み終えました

旅行

バックパッカー達の旅のバイブルとして長年愛されている不朽の名作 深夜特急

先日、とうとう読み終えたので感想をつらつらと述べていきたいと思います

この本は沢木耕太郎氏の実体験をかいた世界旅行の紀行文です

旅行小説(フィクション)ではありません

沢木氏は数々の賞を受賞している名作家ですが、深夜特急はノンフィクションなんですね

第1巻から第6巻まである長編ノンフィクションなので読むのに結構時間がかかります

日々仕事で忙しいサラリーマンが読むのは結構苦戦すると思います

文字を読むのはテレビを見るのとは違ってやはりそれなりに頭を使うので疲れるんですよね

できれば時間のたっぷりとある学生時代や失業時代に読んでおきたかったですね

私もフルタイムで働く派遣社員ですから、本を読むまとまった時間を取るのは難しくて、結局、読み終わるまで半年くらい掛かってしまいました

バックパッカーのバイブルとして使うには微妙な本

深夜特急は沢木耕太郎氏の若き日の世界旅行(東南アジアからヨーロッパまでのユーラシア横断旅)の体験談を記した本です

現在の沢木耕太郎氏は75歳ですが沢木氏がこのユーラシア横断旅をしたのはなんと26歳!

今から50年も前のことなのです

そのころの日本は高度成長期の真っ只中でアジアでダントツのNo1の経済大国で若者が将来に大きな希望を持てる国でした

世界情勢は米国が軍事的にも経済的にも絶大な力を持っていて世界の警察として君臨していましたが、それを快く思わない東側大国ロシアが米国と睨み合っているような世界でした

いわゆる冷戦というやつです

それに比べて今の日本は酷い少子高齢化に喘ぎ、国債(将来への借金)は膨らみ続け、社会保障料や税金も高額で若者は搾取されまくっています

沢木氏が若い時とは違って、若者が将来に希望を持つことは難しい没落国家に落ちぶれてしまったのです

たった50年であれだけ繁栄を謳歌していた日本がここまで衰退してしまうのも驚くべきことです

また、米国の力がこの50年で大きく弱まり、世界の警察として君臨することはできなくなりました

だからロシアや中国などの東側の国が相対的に大きな力を持つようになって世界中で紛争が多くなりました

米国が世界の警察に君臨する力がなくなってしまったので、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルでの戦争など、とにかく地域紛争が世界で多発するようになっています

また、米国同時多発テロ(911)以降は中東地域でテロが頻発するようになった

だから、沢木氏がユーラシア横断旅をした50年前と今では国内も国外の状況が全く異なるのです

だから、”地球の歩き方”を読む感覚でこの本の内容をユーラシア旅の参考にするのはちょっと違うかな?という気もします

沢木氏は東南アジアからヨーロッパまで殆ど長距離バスや長距離列車で移動する旅をしています

今現在、50年前の沢木氏の真似をしてインドから中央アジアを抜けてヨーロッパにバス旅で抜けていくのは結構危険な行為だと思いますね

パキスタン、アフガニスタン、イランなど非政府テロ組織が暗躍するこのエリアをバスで駆け抜ける旅は少なくとも私は絶対にやりたくない💦

テロ組織に囚われて日本政府に対する人質として利用される可能性もあるし、テロに巻き込まれて大怪我したり死ぬ可能性だって十分にあるからです

実際、ジャーナリストの安田純平さんなどはテロ組織の囚われの身になったのですから

まあ、世界旅行するのは日本国内の旅行と違ってノーリスクというのは無理でしょう

日本は落ちぶれたとはいえまだOECDやG7に加入している先進国であり、貧富の格差もまだ比較的小さく、世界の新興国に比べたらまだまだ安全な国です

しかし世界は違います

宗教信仰対立や貧富の格差や領土問題などで近隣国と紛争状態の国は決して少なくないのです

特に沢木氏が旅したインドから中央アジアを抜けて東ヨーロッパに抜けるルートは紛争多発地帯、非政府テロ組織の活動が活発なエリアであり、平和ボケしてカネをそこそこ持っている日本人旅行客などは格好のカモになる可能性が高い

テロ組織に囚われの身になったり旅行先で行方不明になったら自分だけではなく日本政府や自治体にも多大な迷惑が掛かることは頭の隅に入れておいた方がいいでしょう

少なくとも先進国(OECD)以外の国への旅行を計画するときは外務省のホームページなどで渡航自粛を要請している国に安易に旅行するのはやめた方が良いと思ってます

 

だから、深夜特急が現在の世界旅行者に実用的に役に立つか?と言われれば微妙だと言わざるを得ませんね

前述したように、50年前と現在とでは国内情勢も世界情勢も全く違うのでそれは仕方ないことです

現在の世界旅行の情報を得るなら、世界旅行者が配信するYoutubeやブログが沢山ありますからそちらの方が深夜特急よりずっと価値があるでしょう

しかしこの深夜特急という本にノンフィクションとして価値がないわけじゃないです

沢木氏はプロの作家ですから文章が素人ブロガーと違って非常に洗練されています

難しい言葉も随所に出てくるので少し読みにくさを感じる人も多いと多いますが、旅行記として純粋に面白くて楽しめるのです

また、50年前の世界の若者の価値観、風俗を知ることができるのも面白いです

50年前は現在のような新自由主義が出現する前の社会で、米国西海岸でヒッピー(今の日本のニートや中国の寝そべり族です😆)が多く出現しました

しかし、米国のロナルドレーガンや英国のマーガレットサッチャーなどのリーダーの台頭で西側諸国で新自由主義(簡単に言えば労働至上主義)の社会になってヒッピーと言われる人たちは消滅してしまいました😂

深夜特急でもそのヒッピーと沢木氏が交流する場面が多く登場します

 

私は世界旅行ブロガーのブログをよく閲覧しますけど、当たり前ですが沢木氏とは文章力が段違いですね

世界旅行ブロガーのブログは情報を得る媒体としては優れていますが、文章が分かりにくかったり表現が稚拙で読み物としてはつまらないモノも多いです

深夜特急はプロの作家が描いた自身の体験旅行記として大きな価値があります

だからこそ、50年経った今でも読み継がれているのでしょう

現代の旅は便利で快適だが味気なくなったと思う😭

現在の海外旅行は、深夜特急の舞台の50年前に比べてはるかに便利で快適です

スマホとWiFi電波さえあれば、世界中のどこでも、GoogleMapやBooking.comで移動や宿泊は容易になりました

余程の僻地にでも行かない限りは道に迷って観光地やホテルに辿り着けないなんてことは今はないでしょう

しかし、スマホがない時代の海外旅行は渡航先で道に迷うのは当たり前だったと思います

Uberのようなライドシェアもなかったから空港からダウンタウン(市街地)への移動も一苦労でしたし、市街地に着いてからホテルを探すのも大変だったのです

人気観光地以外だと行き着くまでが一苦労で道に迷うことも当たり前でした

深夜特急でも若き日の沢木氏がホテル探しに苦労したり、道に迷ったりするシーンが煩雑に登場します

まあ、昔の海外旅行は大変だったとは思うけどそれも海外旅行の醍醐味だと思いますし後から良い思い出になると思うんですよね

今はスマホとWiFiがあれば、空港からUberなどのライドシェアを使えばホテルや観光地に行くのは簡単だし、人気のお店やホテルや飲食店もGoogleMapで見つけるのもそれほど難しくはない

私も今年の夏にハワイに行った時、スマホを活用しまくってハワイ観光したけど、便利で洗練された旅が簡単に出来すぎて、なんというか味気ないんですよね💦

深夜特急の中で若き日の沢木氏が色んなトラブルに悪戦苦闘する姿がちょっと羨ましく感じました

 

また、格安航空機(LCC)が世界中に浸透し、ハイシーズンを除けば飛行機での移動も以前に比べたらだいぶ低コストになりました

深夜特急の舞台である50年前(昭和50年代前半)は海外旅行は大変に贅沢なことでした

海外どころか国内でも飛行機での移動も多くの人にとって高嶺の花だったのです

今では考えられませんが、昔の日本は人気の新婚旅行先が静岡県の熱海市だった時代もあるんですよ😆

東京から北海道や九州に移動するのは現在では飛行機での移動が当たり前になっていますけど、50年前は寝台列車で移動するのが当たり前でした

50年前は飛行機での移動は相当の富裕層にだけ許された特権だったのです

深夜特急は大学生の時に読みたかった💦

深夜特急は作者の沢木氏の貧乏ユーラシア大陸横断紀行です

移動手段の殆どは長距離バスや長距離列車で宿泊も安宿や野宿が多い

私は既に54歳でこんなハードな旅をする気力はもうないですね😭

私も若い時(30代)は沖縄の離島旅行にハマって毎年夏休みに離島の安宿(3000円程度)を巡って貧乏旅をやってました

沖縄は日本の本州と違って、東南アジアのようなゆるい雰囲気があって東南アジアのように貧乏旅行が可能なエリアだと思います。

沖縄本島の那覇市や名護市、石垣島や宮古島は安宿(ゲストハウス)が多く存在しているのがその証拠です

それに世界トップクラスの美しいビーチが点在しているので本当に沖縄の離島は魅力的な旅行先だと思います😍

ただ、こういった安宿を巡る貧乏旅行は若くて体力があったからできたことであって54歳の現在なら躊躇なく普通のホテルに宿泊しますよ

安宿はただ安いだけの宿であり、滞在中の快適性は全く考慮されていません

多くのお金のないバックパッカーはそれを承知で安宿に宿泊しているのです

雨風凌げて横になれればそれで良いというのは安宿のコンセプトです

私が宿泊した多くの沖縄の離島の安宿はエアコンが設置されていなくて扇風機のみだった😨

部屋の壁が異常に薄くて隣室の人の話し声は全て丸聞こえは当たり前💦

風通しも悪くてジメジメしていたし、床には蟻や見たこともない虫が沢山動き回っている😱

洗濯機やシャワーやトイレは当然共同で宿によってはトイレや洗濯置き場の周辺でゴキブリがぶんぶん飛んでいました💦

今振り返っても、20年前はようこんなクソみたいな宿に平気で泊まっていたな!と信じられない思いですよ

だから、全く眠れずに眠気をこすりながら疲労が抜けていない体で軽くない荷物を持って旅を続けなければならなかったのです

まあ、それだけ若くて体力が有り余っていたのでしょうね

こんな旅は若い時しかできません

深夜特急の中でも沢木氏が安宿や長距離バスや長距離列車で疲労で疲弊するシーン、不衛生な国(インドやパキスタン)で体調不良に陥って苦しむ場面が幾つも登場します

東南アジアやインドなどの新興国は今でも食事事情は不衛生で旅行客だと現地でお腹を壊して下痢が止まらない人も珍しくない

沢木氏が旅した50年前ならば東南アジアやインドはさらに不衛生で食中毒で死ぬ覚悟も必要だったでしょう

文字通り沢木氏は命がけの旅をしてきたのが深夜特急を読むと分かります

ただ、このような疲れるばかりの貧乏旅行も悪いことばかりではなくて、貧乏旅行していると色んな旅人と知り合うことができるんですよね😀

私も30代の時に沖縄離島を貧乏旅していた時は安宿で色んな旅人と知り合いました

沖縄の安宿の多くはユンタク(宿の敷地内のテーブルを囲んで宿泊者同士がお喋りする事)が盛んで、夕食が終わると自然に宿の外に置いてあるテーブルに宿泊者が自然に集まってお互いの旅情報を交換し合う文化があります

こういう他の旅行客との交流はビジネスホテルや高級リゾートに宿泊すると絶対できないですよ

他の宿泊者と親しくなるチャンスが転がっているのが安宿を利用する最大のメリットです

私は陰キャのコミュ障ですが、ユンタクには結構積極的に参加していましたし、その場限りの出会いとはいえ良い思い出が数多くあります

ユンタクで意気投合してその後の旅を一緒にする人もいるし、中には結婚するカップルが誕生したりするんですよ😀

八重山諸島の最南端の離島である波照間島には、ユンタクで意気投合して結婚する人が多い安宿がありました😍

一種の恋人探しというか婚活の場所になっている安宿が幾つかあったんですよね

まあ、ユンタクもその日の宿泊者のメンツによって当たり外れがあるんだけど(笑)、何かと孤独に陥りがちな一人旅の中でユンタクはある種の清涼剤や寂しさを紛らわすことができる文化なんですよ

深夜特急の中でも安宿で沢木氏が他の宿泊者と親しくなって旅を一緒にするシーンや、長時間のバスや電車移動で近くの乗客と親しくなっていくシーンが結構多いです

当然、海外では日本語は通じないので他の宿泊者や乗客と交流するには最低限の英語力は必要です沢木さんは作家だしインテリだからそれなりの英語力を若い時から持っていたようですね

最後に

私は深夜特急を読み終えて、これを大学生の時に読みたかったなぁ・・と感じましたねぇ

54歳の私が東南アジアや中央アジアや東ヨーロッパに行く場合、前述したように体力的な問題で長時間のバス移動や電車移動はできないし、安宿(ドミトリー)に長期滞在することもできない

安宿というのは基本的に若者達が利用する宿泊施設で私のような中高年が利用する雰囲気の宿泊施設ではありません

私の沖縄貧乏旅行を思い返しても石垣島、宮古島、慶良間などの安宿の宿泊者は皆20代、30代の若者でした

40代以上が宿泊禁止されているわけじゃないけど、人間とは自然に同世代と連む生き物なので40代、50代が安宿に泊まってもうまく他の若者の旅人と交流できずに浮いてしまうと思うんですよね💦

それは深夜特急の中の描写でもそうです

26歳だった沢木耕太郎氏が安宿で知り合って交流した人たちは皆同世代の若者ばかりでした

中高年や高齢者と意気投合して一緒に食事に行ったり旅を継続するシーンは一切無かったと思います

だから私は深夜特急を読み終えてなんともいえない寂しさを感じました

仮に私が今、会社を辞めて今の賃貸住宅を引き払って、ユーラシア大陸横断の旅をしたとしても、深夜特急みたいな過酷な旅はできません

主要な観光都市(バンコク、カルカッタ、ニューデリー、テヘラン、イスタンブール、アテネなど)を飛行機で移動してそこそこのホテルに泊まる旅行はできるでしょう

ただ、若き日の沢木耕太郎氏が体験したような長期間の(深夜特急は一年以上!)さまざまな出会いや体験をする密度の濃い旅行はもうできないのです

長期のバックパック旅行というのは改めて若者の特権なんだなと深夜特急を読んで認識しました

残念ながらその若さというものはいくらカネを積んでも買うことはできません

私は20代の時は地方の中小企業に勤務する貧乏サラリーマンでした

その時は週末に国内旅行する程度で長期の海外旅行など金持ちしかできないモノだと思い込んでいました

それは言うまでもなく仕事が忙しかったから、海外旅行するようなお金も時間もなかったからです

しかし、大学生の時、少なくとも35歳までにこの”深夜特急”という本に巡り合っていれば私も若さに任せて長期世界旅行をしてやろう!と言う野望も抱けたかもしれない

私は読書は好きな方で若い時から週末には大型書店を巡って、小説、ビジネス書、自己啓発本などを読み漁っていたけど、深夜特急に巡り合うことは出来なかった

これも残念ながら私の運命です😭

とにかく、20代、30代の時にしか出来ないことは沢山あるので(深夜特急のような過酷な世界旅行、恋愛、キャリアチェンジなど)、仕事のことやお金を貯めることばかり考えないで、時間やカネを大事なことに使うのも20代、30代は極めて大事な時期です

私のようの若い時の時間の大切さを50代になって気がついても遅いのです😨

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