売り上げを、減らそう(ステーキ店佰食屋 中村朱美著)|飲食店経営者だけでなく一般企業の経営者、管理職、就活生も役立つ本です!

読書

”売り上げを、減らそう たどり着いたのは業績至上主義からの解放”という本を紹介します

こんにちは、この夏季連休中に何気なく手にした本でとても良い本があったので紹介したいと思います。

京都のステーキ店 佰食屋のオーナーである中村朱美さん著書の”売り上げを減らそう”です。

私はブログやツイッターのネタにもなると考えて、気になった本をよく書店で購入しますが、残念ながら内容がつまらなくてハズレの本も結構あります(笑)。幸いこの本はとても興味深く読むことができました。

価格1500円の新刊で決して安くはありませんが、その価値はあると思います。

何故かというと、企業経営で大事なこと(商品力、人材採用、人材育成、現場、従業員マネジメント、創業から軌道に乗せるまでの苦しみ、経営不振時の乗り切り方)が中村さんの経験に基づいてきめ細かく書いてあるからです。

ビジネス本は理論だけの机上の空論のような本も時々ありますけど、この本は違います。著者本人の体験によるので中身の説得力がありますね。

この本に興味を持つのは不振に萎えぐ飲食店経営者かもしれませんが、中村さんの経営哲学(社員の幸せと利益の両立)は一般企業の経営者や部下を持つマネジメント層にも大変参考になるはずです。

あとは就活生にも一読することを勧めたい。中村さんのような普通の経営者とは違う考えを持つ経営者の考えを知ることは就活生にとっても有意義だと思います。

なぜ売り上げを、減らそうを購入したのか?

本の帯に魅力的な文字が多く並んでいたからなんです。

●社員を犠牲にしてまで追うべき数字なんてない

●社員の働きやすさと会社の利益を両立した京都の定食屋の驚異のビジネスモデル

●テレビ東京 ガイアの夜明け特集で大反響

あとは、著者の中村さんの大きな写真が本の帯にあるのもいいですね。SNSでもそうですけど、顔出しすると発信内容の信用がやはり高まりますよ。著者もいい加減なことは書けないだろうし、著者にとっていい意味でプレッシャーになると思うんですよ。

 

私自身、大手企業で派遣社員として働いていて、派遣会社からは搾取されて低賃金で働かされている人間です。多くの日本企業の派遣社員を犠牲にして利益を上げるビジネスモデルには常日頃から大きな疑問を感じています。

社員を犠牲にせずに利益を上げるビジネスモデルは一体どういうものなんだろうと、非常に興味を持ちました。

”売り上げを減らそう”で心に響いた箇所

沢山あるのですが、特に心に響いたフレーズを少し紹介します。

●もう”頑張れ”なんて言いたくない ”仕組み”で人を幸せにしたい

→この言葉、日本企業全ての経営者に聞かせたいですね。従業員を搾取しか考えていないような企業がいかに多いことか。本来、経営者の仕事は仕組み作り(ビジネスモデル作り)で利潤と社員の幸せを追求するのが仕事のはず。安易に派遣社員を増やして人件費を抑制したり、少し業績が悪くなったら社員の大量リストラなど、経営責任そっちのけで従業員を犠牲にする経営者が本当に多すぎますよね。

●専門家は口々に言った ”阿呆らしい””うまくいくわけがない”

→専門家の意見が如何に的を外しているのかいい証明。それだけけなされたビジネスモデルが顧客から支持されて急成長を遂げた。専門家って何なの?ただのポンコツですかね・・・と思わずにはいられない。

●最初は20食も売れなかった。20時の閉店時間を迎えると泣く泣く食材を廃棄しなければなりませんでした

→これは涙なしでは読めないコメント(泣)。飲食店は保存できない生物を扱うことも多いわけだから、仕入れしてもお客さんが来なかったら食材を捨てるしかない。これは本当に悔しいはずです。使える食材を廃棄するのは経済的にも損失だけど、罪悪感も相当感じますよね。日本でも世界でも貧困層の人は明日のパンにも困る人がたくさんいるわけですから。

●たった一件の個人ブログでお客様が押し寄せた

→経営は何かのきっかけで突然に軌道に乗り出すものなんですね。じわじわと良くなるのではなく突然ブレイクする日が来る。それまで諦めずに続ける事が大変ですよね。

●”店舗を増やそう”という考えが先にあったのではなく、あくまで従業員の成長にふさわしい環境を用意できればと、一人一人のやりたいことと向き合って、決めていったことです。

→この考えは素晴らしいと思う。店舗を増やす事が金儲けが目的ではなく、従業員の成長の場を与えるためというのがミソ。従業員が成長すれば自然に新店舗の売り上げも増えるし、そうなると経営者も従業員もWINWINになりますよね。

●圧倒的な商品力があれば、マーケティングや売上分析、経営コンサルも不要

→逆に言えば、マーケティングが必要ということは商品力が弱いということですね。このお店は原価率を非常識なくらい高めたことで顧客の満足度が高く、顧客がSNSで勝手に宣伝してくれることになった。→結果として宣伝費が不要になった。非常に賢い経営方針だと思います。

●アイデアも経験もコミュニケーション力が不要な会社

→採用されている人も内向的でおとなし目の真面目な人が多い。こういう会社でも大手チェーンを圧倒する企業担っているのは痛快だし、内向的でコミュ力がなくて引け目を感じている人も勇気が出るのではないでしょうか?私もコミュ力はないので勇気を頂けました。世の中にはいろんな企業があるんだなと思いましたよ。

●愛のない仕事は仕事ではない

→一見単純作業に見える仕事でも、顧客の立場に立ってみれば、改善する点は幾らでも見つかるということ。著者の中村さんは牛肉のスライス作業を例にとって説明していますが、どんな単純作業でも当てはまる考えですね。

●売上目標なんて邪魔

→多くの企業では従業員にプレッシャーをかけて緊張感を持たすために売上目標を立てていますが、これだと従業員の姿勢が顧客目線ではなくて企業の都合になってしまいます。結果として顧客満足度が下がり業績が悪くなるという笑うに笑えない企業も多いと思います。そういう意味で顧客満足度を下げる売上目標は邪魔ですね。

●佰食屋が従業員のスキルアップの場所になっている

→これは非常に良い話ですね。コミュ力不足だった従業員がお店で働くことでコミュ力が上達し有能なビジネスマンになり転職や独立を果たす人もいる。佰食屋は従業員にとってビジネススキルをつける道場のような存在になっている。

●FL(材料費+人件費)が80%でも利益を出せる理由

→材料費と人件費以外の固定費(広告宣伝費ゼロ、安い家賃、100食限定で光熱費を安く抑える)を抑えているので利益が出るんですね。広告はお客さんのSNSを利用し、安い家賃でも駅や大規模集客施設に近い優良物件に店を構えるなど、お金を使わない戦略が素晴らしい。

●会社が儲かっても社員が報われないのはおかしい

→ほとんどの企業は儲かると内部留保をため込んで従業員には還元しない。儲かったのは社員が頑張ったからなのに社員に還元しないのは本当におかしいですね。設備投資や不況に備えて内部留保を溜める企業が多いのでしょうが普通は設備投資が必要なら銀行などからカネを借りることが経営者の仕事だと著者の中村さんが喝破している。

●佰食屋ではお客様は神様ではない

→従業員とお客様は対等であるという佰食屋イズムがいいですね。お客様は神様ですが行きすぎると客層もどんどん悪くなっていくし、従業員も疲弊してしまう。疲弊した従業員が良いサービスを提供できるわけはないので長い目でみると経営上もよくないだろう。お客の質を上げることと従業員の労働環境が両立する意味で非常に良い社風だと感じますね。

●採用した従業員が接客でミスを連発

→普通の経営者ならば厳しく叱責するかクビにするかもしれませんが、中村さんはその従業員を調理担当にしたところ、包丁さばきがすごく上手くて才能が開花。従業員の苦手なことではなく得意なことをやらせて、本人の自尊心を高めてスキルを飛躍的に上昇させる。従業員のマネジメントがすごくうまい。というかこういうことができない管理職が多すぎると感じますね。従業員が使えないと嘆く管理職は、その管理職が従業員をうまく使う能力がない場合が多いと感じます。

●就活弱者を生かす採用姿勢

→一般の企業から見るとコミュニケーション能力がない落ちこぼれと思われる人を積極的に採用する姿勢。消極的だけど真面目にコツコツ仕事ができる人を積極的に採用する姿勢はいいですね。中村さんのようなマネージャーが増えたら、世の中から引きこもりはだいぶ減ると思います。引きこもりの人たちは職場で不当な扱いを受けて自信をなくしている人が多い。

一般の企業が敬遠する人材を採用して経営が順調なのが面白いですよね。人は使いようであるということがよくわかる良い事例と思います。

一般的な仕事ができる人というのは、自己中心的で粗野で仕事をできない人をバカにする傾向にあると思う。こういう人間がいると職場の雰囲気も悪くなるし生産性も下がる。仕事ができる人が組織の生産性を上げる能力があるのかというと私の経験でも疑問に感じざるを得ない。

まとめ

”売り上げを、減らそう”は飲食店経営者だけではなく、一般企業の経営者、管理職にも十分参考になる内容と思います。また企業に就職することを考えている学生にもぜひ読んでほしいです。

特に、従業員なんて安い人件費で使い倒してなんぼでしょ?、社員の幸せなんて綺麗事でしょ?と考えている人に読んでほしい(笑)。

中村さんの経営哲学(社員の幸せと企業利益の両立)は業種を問わずに、ホワイト企業とはなんぞや?会社経営とは?ということを考える上で参考になると思います。

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