iDeCo(個人型確定拠出年金)は非常に複雑な制度です
お世辞にもわかりやすい制度とは言えません
多くの人は住民税や所得税の節税効果がある制度、くらいの認識しかないのではないでしょうか?
私自身、iDeCoを完全理解しているわけではありませんが、4年前にネット証券最大手のSBI証券でiDeCoを始めました
iDeCoは制度がどんどん変貌しているので加入している人もこれから加入しようとしている人も
関連情報をアップデートする必要があります
iDeCoの情報をアップデートする良い書籍があったので紹介したいと思います
【iDeCoのトリセツ(2022年施行法改正完全対応版)】
私がこの本の優れていると感じたのは以下の3点です
1 2022年度の制度変更点を大きく取り上げている
2 iDeCoの受け取り方の説明が大変丁寧である
3 加入後の様々な手続きの具体例、Q &A集が充実している
図解や表やグラフを多用しているので、複雑なiDeCoの仕組みを分かりやすく説明していると思います
一つ一つ掘り下げていきます
2022年度〜2024年度の制度変更点を大きく取り上げている
沢山の変更点があるのですが、目玉は以下の3点でしょう
1 会社員、公務員は65歳まで加入できるようになる
今までは60歳までしか加入できませんでした
65歳まで加入できるようになることでiDeCo で積み立てた資産が増えるわけだから65歳以降の受取額も当然増えます
また、65歳から70歳までiDeCoで年金を受け取るようにすれば、公的年金支給開始を70歳に遅らせることもできます
公的年金は支給開始年齢を引き上げたほうが支給額が上がる制度なのでiDeCoはそのような場合に威力を発揮すると思います
2 企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者もiDeCoに加入できるようになる
上場企業の場合、企業型DCに加入している企業も少なくないでしょう
私が昔在籍していた上場企業は、厚生年金基金を廃止して企業型DCを導入しました
企業型DCは企業の退職金制度の一つです
企業型DCも確定拠出年金には違いないですから、個人型確定拠出年金(iDeCo)との併用は今までできなかったわけです
併用すれば積立額(総資産)も当然増えるわけですからこれは良い制度改良だと思います
公的年金制度はどんどん改悪されているので国民はiDeCoや企業型DCを目一杯活用して資産防衛するしかありません
3 公務員などの積み立て可能額が高くなる
公務員や一部の恵まれた会社員は確定給付企業年金(DB)があるのでiDeCoの毎月積立額は最大12000円までに制限されています。
一方、私のように企業型DC、DBに加入できない会社員や派遣社員は最大で毎月23000円まで積み立てることができます。
ところが、2024年の12月以降、公務員なども最大で20000円まで積立額を増やせるようになります
DBの掛け金が多い人は逆に積立可能額が更に減るようですが、DBの積立額が多い人はそもそもiDeCoを利用するメリットは低いので問題はないでしょう
iDeCoの受け取り方の説明が大変丁寧である
iDeCoは運用機関(金融機関)や運用商品(投資信託)の選択が大変重要です
大雑把に言えば、ネット証券で運用手数料の安い投資信託を選ぶ必要があるわけです
ネット証券以外で手数料の高い投資信託を運用すると手数料負けして大損してしまう可能性が高くなるからです
iDeCoは運用するだけで様々な手数料がかかるのでとにかく低コストで運用するのが大事なのです
その辺の説明もこの本では丁寧に説明してあるのでご安心ください
現在、iDeCoを運用している若い人は運用機関(金融機関)や運用商品(投資信託)をどう選べば良いのか?に関心が高いと思いますから、受け取り方まで関心を持っている人は少ないでしょう
それはそれで良いと思います
ただ、50歳過ぎた人は受け取り方を意識し始めた方が良いと思います
iDeCoは制度上、受け取り方は大変に重要です
何故なら、受け取り時に課税対象になり、受け取り手数料もかかるからです
受け取り時の制度をきちんと理解していないと、大損しかねないのです
この辺がiDeCoの制度設計の欠陥だと私は感じています
情報弱者にはあまり優しくない制度なんですよね
iDeCoの受け取り方は下記のように3つあります
1 一時金として一括で受け取る
受け取り額の全額に課税されるわけではなく、退職所得控除が適用されます
退職所得としての課税対象となるのは、受け取った一時金から退職所得控除額を差し引いた額✖️0.5です
ここで注意しないといけないのは、受け取った一時金は会社から貰う退職金も一時金に含まれることです
会社からの退職金が多い人はiDeCoの一時金と合わせると結構な退職所得額になるはずです
退職所得に対する課税額が大きくなるので、会社からの退職金が多い人は一時金で受け取るのは不利になります
2 年金として受け取る
公的年金控除が適用されます
雑所得として課税対象になるのが、年金収入額から公的年金控除額を差し引いた額です
年金収入額は、公的年金+企業型確定給付年金(DB)等+iDeCoの年金ですから、公的年金やDB等の金額が多い人は課税額がバカにならなくなります
3 一時金と年金を組み合わせる
前述したように、会社からの退職金が多い人や公的年金、企業型確定給付年金(DB)、企業型DCの支給金額が多い人はiDeCoと同時期に受け取ってしまうと、課税額がバカになりません
節税を考えると、人によっては、一時金と年金を組み合わせて(分散して)、受け取ることも考えなければなりません
受け取り年齢
受け取り年齢は60歳〜75歳まで原則、自由に選ぶことができます
60歳の時点で運用商品の成績が芳しくない場合、65歳や70歳まで寝かせておくことも可能なのです
その間に株式市場が回復して運用成績が上がるかもしれませんからね
ただ、一部の加入期間が短い人は60歳からは受け取れないので注意が必要です
お得な受け取り方の事例が満載
この本では、iDeCoの受け取りは会社からの退職金や公的年金と受け取り時期をずらすことを提案しています
いうまでもなく、節税のためです
運用期間中は住民税や所得税が減税されるのに、受け取り時に大きな課税をされたらiDeCoに加入する意味が半減してしまいます
その節税のやり方は個人の事情(退職金支給額、公的年金支給額など)により大きく異なります
その辺もこの本では詳しく触れているので有り難いですね
加入後の様々な手続きの具体例、Q &A集が充実している
現在は、定年まで同じ会社で働く人はもはや少数派です
転職を繰り返すことが特に若い世代では当たり前になりつつあります
ただ、iDeCoは転職した場合や、無職期間がある場合、自営業に転身した場合などには様々な手続きが必要になります
会社は何もやってくれませんから加入者が自ら手続きをやらないといけません
私自身、元々は企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していましたが、その会社を退職して無職になり、その後にiDeCoに資産を移動して派遣社員を転々とする生活をして今に至っています
勤め先や国民年金基金連合会や金融機関(証券会社や銀行)と様々なやりとりをしなければならなかったので正直面倒臭かったですね
加入後も色々な手続きが必要なこともiDeCoの大きな欠点だと思います
ただ、この本では、転職や退職した際の加入後の手続きも詳しく記載されているので安心してください
iDeCoのお勧めの運用機関(金融機関)
SBI証券(セレクトプラン)か楽天証券を選べば間違いないです
SBI証券の場合、オリジナルプランというプランもあるのですがこれはやめたほうが無難です
セレクトプランの方が遥かに投資信託の種類が充実していますから今やオリジナルプランを選ぶ理由は全くありません
ちなみに私はSBI証券のオリジナルプランに加入していますが、私が加入した時はセレクトプランが無かったんですよね
乗り換えることもできますが手続きが面倒なので乗り換えはしていません
投資信託の種類も豊富ですし、口座開設手数料も運営管理手数料も無料ですから選ばない理由がないのです
メガバンクや店舗証券(野村証券など)でiDeCoに加入することは止めましょう
これらの金融機関は口座開設手数料や運営管理手数料が高額なので選ぶべきではありません
余計な手数料を延々と払い続けることになります
iDeCoでお勧めの金融商品(投資信託)
SBI証券(セレクトプラン)
以下の4つのどれか、もしくは組み合わせで良いと思います
日本を除く世界株式に投資するのがポイントだと思います
日本は少子高齢化が急速に進行してるし国の財政状況も悪いので、経済成長する原資が何もありません。個人的には日本に長期投資する気には全くならないですね。
他にも色々な投資信託がありますけど、信託報酬率が高いので避けた方が無難ですね
私が今から加入するならば、eMAXIS Slim 全世界株式インデックス(日本を除く)を選びます
このファンドに投資して運用成績が悪ければ諦めがつきますから
eMAXIS Slim 米国株式(S & P500)
米国を代表する大手企業500社に投資するインデックスファンド 信託報酬率は0.0968%
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
日本を除く主要先進国に投資するインデックスファンド 信託報酬率は0.1023%
eMAXIS Slim 全世界株式インデックス(日本を除く)
日本を除く、全世界(先進国、新興国)に投資するインデックスファンド 信託報酬率は0.1144%
ニッセイ外国株式インデックスファンド
日本を除く主要先進国に投資するインデックスファンド 信託報酬率は0.1023%
どれも非常に低コストでどれを選んでも文句ないと思います
楽天証券
以下の2つのどちらか、もしくは組み合わせで良いと思います
楽天・全米株式インデックスファンド(楽天・バンガード・ファンド(全米株式))
米国株式市場の大型、中型、小型株の4000社に投資するインデックスファンド
信託報酬率は0.162%と十分低コストです
eMAXIS Slim 米国株式(S & P500)に比べてより分散が効いていると言えるでしょう
ただ、過去の運用成績を見ると大差はないので、米国株に投資したければどちらでも問題ない(大差ない)と思います
楽天・全世界株式インデックスファンド(楽天・バンガード・ファンド(全世界株式))
日本を含む先進国、新興国の7000社以上に投資するインデックスファンド
信託報酬率は0.212%とちょっと高めです
信託報酬率が0.5%を超える投資信託は沢山あるので決して高いわけではないけど、eMAXIS Slimシリーズに比べると割高感は否めませんね
全世界株式に投資するならば、私なら、SBI証券でeMAXIS Slim 全世界株式インデックス(日本を除く)を迷わず選ぶでしょうね
まとめ
書籍、iDeCoのトリセツ(2022年施行法改正完全対応版)を紹介しました
私はこの本を読んで、iDeCoの運用で一番大事なことは、60歳以降の受け取り方法であることを認識しました
そのことが分かっただけでもこの本を購入した価値はあったと思っています
多くの人はiDeCoの節税効果(住民税、所得税の削減)や運用機関や運用商品の選び方に注目してしまうと思います
それは悪くはないのですが、iDeCoは受け取り時に課税され、受け取り手数料もかかるので、賢く受け取らないと大損してしまいます
この本には、節税しながら賢く受け取る方法が分かりやすく詳細に記載されているので非常に良かったです
また、iDeCoはこれからも改訂されていくと思いますので数年おきには知識をアップデートする必要があると思います
iDeCoに限らず積み立てNISAもそうだと思いますが改訂されたら知識をアップデートすることは絶対に必要です
知らないことで損することはこの世の中に沢山あるので注意しないといけないと思います
こんな記事も書いています
【2022年最新版】iDeCoと積立NISAの比較。両制度共にメリットとデメリットがあるので利用前の勉強が必須。