老後2000万円の嘘。介護が必要になれば全く足りない。

介護

数年前に老後2000万円問題が話題になりましたね

65歳以降の年金収入プラス2000万円以上無ければ豊かに暮らすことは出来ないと国が国民に向けて呼びかけたのです

この2000万円という数字には賛否両論あると思う

私はこの2000万円という数字は高齢まで健康に生きることが出来るのが前提の試算だと思っている

つまり、非常に楽観的な試算なのです

高齢者になって健康を前提にすること自体ありえないと、私は思う

人間は歳を取ったら必ず体の色んなところにガタが来る

個人差はあるにせよ、誰も老いからは逃れることは出来ない

国は65歳以上になっても出来るだけ働くように促しているようだがそれも健康な体があってこそだ

手足が思うように動かなくなったり、重い病気にかかったら当然働くことは出来ない

65歳以降に病気をして働けなくなったり介護が必要になったら2000万円程度では全く足りないと感じている

去年、父親の介護を経験して強くそう感じるようになった

私の父親(79歳)のケース

老後2000万円の嘘。介護が必要になれば全く足りない

昨年の夏、父が病に倒れて(関節リウマチ)、他人の介助がないと生活できない体になりました

手足が思うように動かなくなったので常時、車椅子に座る必要があり、その車椅子も手が動かないので自分では動かせなかった

車椅子を押す介護する人が必要になった

こうなってしまうと自宅で誰かが介護するか、介護付き老人ホームなどに入居するしかない

母親は8年前に胃癌で他界し、それ以降、父親は一人暮らしだったので誰も介護する人はいないので介護施設に入居するしかなかった

長男である私が介護士しろ!という声も聞こえてきそうだが、私の考えではそれは絶対にあり得ない

私が直接介護をするということは私が失職することを意味する

私の年齢上(52歳)、再就職は難しい

介護離職することは私の現在の生活が破綻し私の老後の生活も破綻する事を意味する

父親の入院中に介護施設を探さなければならなかったのです

実家の近くでは高額な介護施設しか空きがない!

私はフルタイムで仕事をしているし父親とは遠く離れた場所に住んでいるので私が介護施設を探すことなど不可能だった

父親のケアマネージャーの知り合いの老人ホーム入居アドバイザーや、介護コンサルタントに頼んで介護施設を探してもらった

その結果分かったことは比較的、入居料金が安い介護施設(老健や特養)は満床で入居不可だということ

空いているのは毎月の介護施設利用料金が25万円以上の施設ばかりだった

介護施設を利用する際にかかる費用は介護施設利用料金(家賃、食費、管理費)だけではない

介護保険料、訪問診療費、薬剤費、その他の料金も上乗せされる

施設によっては入居時に高額な入居一時金(500万から1500万円)を請求するところもあった

施設利用料金が25万円でも総額で毎月30〜35万円弱かかるのだ

私の父親の毎月の年金手取額は18万円だったので毎月12万円以上の足が出る

年間で140万円

10年で1400万円、20年で2800万円、30年で4200万円だ

父親は79歳だったので105歳まで入居すると仮定すると4000万円以上の貯蓄が必要だと分かったのだ

これだって楽観的な試算だ

施設利用料は長期的には値上がりする可能性が高いし、介護保険料、訪問診療費用、薬剤費用も恐らく値上がりしていくだろう

少子高齢化が加速する日本でこれらの負担が安くなることは絶対にない

父親の年金額(毎月18万円)で施設利用料金が25万円の施設に入居する場合、ある程度余裕を持って試算すると年金収入以外に5000万円程度は必要だということです

父が住んでいる持ち家を売却すれば貯蓄を合わせて5000万円を捻出できたかもしれない

ただ、父親は持ち家を売却する意思がなかったので預金だけではとても5000万円は賄えない

介護で非常に重要なことは無い袖は触れないのです

富裕層は介護施設探しには困らないけど、多くの庶民は介護施設探しには苦労するはずです

私の父親の場合、父親の年金額と預金額から20万円以下の施設を探すしか選択肢はありませんでした

父親の持ち家から遠く離れた介護施設へ

仕方ないので老人ホーム入居アドバイザーに実家の近くだけではなく、エリアを広げて介護施設を再度探してもらうことにした

そうすると20万円以下(15万円〜20万円)の老人ホームが数件見つかったけど父親の持ち家(私の実家)からはかなり遠い(車でI時間半)。

父親は予想通り自宅から遠い介護施設に難色を示したが、ケアマネージャーに説得してもらってなんとか納得してもらい、自宅から遠く離れた老人ホームへの入居が決まった

入居した施設の毎月の利用料は19万円

これでもその他諸々の費用を加算すると毎月25万円以上の出費だ

父親の毎月の年金額(18万円)や預金残高を考えると決して余裕はなかった

この施設でも毎月7万円以上の預金が減っていくので年間で84万円減る

10年で840万円

20年で1680万円

30年で2520万円

歳を取っていくとさらにいろいろな病気にかかって病院に入院などもしなければならないだろうから更にお金はかかるだろう

病院に入院している間も、老人ホームの入居費用はしっかり取られます

その上、父親の場合、持ち家の維持管理費も年間30万円以上かかる試算だった

持ち家の管理費用も10年で300万円、20年で600万円、30年で900万円かかる

大規模な修繕が必要になったら更に管理費用が高くなることは言うまでもない

施設利用料が毎月20万円以下の比較的安価な老人ホームでさえ20年入居する場合、持ち家の管理費を含めて最低2500万円弱かかることが分かったんです

年金額が少ない人は更に費用は跳ね上がります

更に言えば私の父親の場合、79歳という年齢での資産ですからね

65歳の時点で2000万円程度の貯蓄ではどうにもならない可能性が非常に高いのです

就職氷河期世代で派遣社員の私 & 資金が少ない叔母のケース

叔母は介護施設利用を既に諦めていた

父親の毎月の年金手取り額を知った時(18万円)、こんなに少ないのかと愕然としたものです

父親は上場企業で管理職になりましたし、定年退職後は75歳を過ぎてもシニアスタッフとして非常勤で勤務していました

75歳過ぎまで働いてもこんなに支給額が少ないのか!と驚きました

しかし、これでもまだ恵まれている方なのだろう

私の母方の叔母(80歳)に私の父の事情を話した時、叔母は介護施設入居は諦めていると言っていた

私の父親よりも年金支給額も預金額も大幅に少なくて介護施設に入れるような状態ではないという

ただ、自立して生活できなくなったらどうするのだろうか?と心配になった

叔母には娘が二人いるが二人とも仕事をしているし、一人は小さな子供の子育ての最中だ

叔母の家の近所に住んでいるわけでもないから娘二人に介護を頼るのは無理がある

ケアマネージャーや介護ヘルパーなどの利用でなんとか乗り切ろうとしているのだろう

日本の介護保険制度は脆弱

私は父親の介護に携わって、日本の介護保険制度は極めて脆弱なことを思い知った

介護保険制度自体が非常に複雑で分かりにくいし、利用サービスによっては結構なお金がかかる

介護度(7段階ある)によっては利用できるサービスが大幅に制限される

また介護申請などの手続きもかなり面倒くさいし役所の動きも鈍い

典型的なお役所仕事だ

叔母が期待しているような介護を受けることは恐らく無理だろう

介護保険制度を賢く利用するには事前に相当の勉強が必要だと思いますね

知識がない人は高額なサービスばかりを利用することになり介護業界からカモられるだけだろう

携帯電話に例えれば、格安SIMの存在を知らずに高額な3大キャリアを利用するようなものだ

 

 

派遣社員の私が介護施設利用は無理ゲー

私の場合はどうか?

日本年金機構から送られてくる私の年金支給予定額(国民年金+厚生年金)は月11万円だ

勘違いしてほしくないが、これは手取り額ではない

実際に口座に振り込まれるのは、この11万円から住民税、健康保険料、介護保険料が引かれた額だ

恐らく毎月の手取り額は8万円〜9万円くらいになるのではないだろうか?

私の父親の半分以下の振込額だ

この年金支給額では民間の介護施設入居は無理だし、老健や特養などの安価な施設も無理だろう

安価な老健や特養でも月額利用料は10万円〜15万円の施設が多い

前述したが、この月額使用料に介護保険料、訪問診療費、薬剤費なども更に上乗せされるのだ

安価な老健や特養でも利用総額で15万円から20万円の費用が毎月かかると思っていた方がいいだろう

 

仮にだが、私が毎月総額利用料15万円の施設に75歳から入る場合を試算してみよう

毎月の年金振込額が8万円と仮定すると毎月7万円が別途必要になる

年間で84万円別途必要になる計算だ

85歳で亡くなる場合(10年入居):必要預金 840万円

95歳で亡くなる場合(20年入居):必要預金 1680万円

105歳で亡くなる場合(30年入居):必要預金 2520万円

105歳まで試算するのは少し大袈裟すぎると思われるかもしれない

ただ、介護関連の専門書を読むと、介護施設利用の場合の必要経費は105歳まで生きる事を考えて計算するべきだと書かれていました

私の場合、75歳で介護施設に入居する場合、最低でも2500万円程度の預金が必要になるわけだ

薄給の派遣社員の私が75歳の時点でこの資産を準備するのは難しい

介護施設入居は連帯保証人が必要

問題はまだある

多くの介護施設は入居の際に連帯保証人を求められる

通常は親族(子供や兄弟や配偶者だ)が連帯保証人になる

私の父親が介護施設に入る際は長男である私が連帯保証人になった

私は父親と異なり結婚したことがない独身だし兄弟もいないし頼れる親族もいない

天涯孤独の身だ

だから、おひとり様は仮に資金に余裕があっても原則、介護施設には入れない事を知っておく必要がある

私のような人を対象に連帯保証人を引き受ける会社もあるのだが、私が調べる限り高額な費用(数百万円)を請求する怪しい会社が多い

そういう会社を利用するのは最後の手段だと思う

私の場合、介護施設に入りたければ数百万円のカネを払って連帯保証人を引き受ける会社を利用することになる

そうなると先ほど試算した2500万円にさらに連帯保証人の代行サービス料に数百万円支払わなければならないから75歳の時点で3000万円程度の預金が必要なことになる

65歳〜75歳の間はどうする?

更に問題はまだまだある

前述したのは75歳からの必要資金の話で年金支給予定の65歳から75歳までの10年間をどのように生きていくのか?という重大な問題がある

前述したように私の年金手取り予想額は8万円〜9万円

当然、こんな金額で生きていくことは無理だ

節約家の方はこれでも暮らせると主張するかもしれない

ただ、多くの若い節約家の方々は私に言わせれば高齢時の医療費、薬剤費の見積もりが甘いと言わざるを得ない

若い人は高齢時の医療費を甘く見積もり過ぎ!

高齢になると若い時のように消費にカネを使うことは無くなるだろうが代わりに医療費が掛かるようになるのだ

私は今52歳だが、20代から40代の時はほとんど医療費などかからなかった

アトピー性皮膚炎の持病があったので数ヶ月おきに通院していた程度だった

ところが今は違う

45歳を過ぎてから健康診断で高脂血症を指摘されたし、飛蚊症(高齢化による目の慢性病)、不眠症の症状が出てくるようになり、内科、眼科、心療内科に度々通院するようになった

また、整形外科的な病気にもかかるようになった

数年前には、脊椎に謎の痛みが起こり首を動かすたびに激痛が走るようになり、堪らず整形外科や脳神経外科を転々とした

最終的には総合病院の脊椎外科でCT検査をして頸部脊椎に炎症が起こっていることが分かり、ステロイド服用でなんとか炎症を完治させることができた

この時は色んなクリニックでCTやMRI診断をしたので総額10万円弱の医療費がかかった

 

最近は膝の痛みや肘の痛みが出てくるようになり整形外科に通うようになった

毎月の医療費、薬剤費は軽く1万円を超える

MRIやCTなどの画像診断をした場合、それだけで一万円近い出費だ

60歳を過ぎれば更に色んな持病が出てくるのは避けられないだろう

それに比例して医療費、薬剤費は上がっていくのだ

こんなわけで、高額になる医療費、薬剤費を考慮すると65歳から75歳では最低でも毎月15万円程度の生活費はかかると思っている

ある程度文化的に豊かに暮らそうと思ったら20万円以上必要だろう

毎月の年金振り込み予定額の8万円から9万円では到底足りない

職種を選ばなければ仕事が見つかり、月10万円弱は稼げるかもしれない

ただ、足腰が弱って働くことは無理な体になっているかもしれない

そうなった場合、頼みになるのは貯蓄だ

毎月の生活費が15万円の場合、年金振込額が8万円とすると差額は毎月7万円

1年で84万円

10年で840万円

前述したように75歳からの生活費(介護施設利用)が3000万円程度の試算なので65歳からの生活費を加算すると4000万円前後必要になる計算だ

ただこれは最低限の資産なので豊かに文化的に暮らそうとしたら少なく見積もっても65歳時点で5000万円は必要だと思う

 

私の試算の仕方には賛否両論あるだろう

私も自分の試算方法が絶対に正しいとは思っていない

ただ、政府が発表した老後資金2000万円という試算はあまりにも楽観的な試算と言わざるを得ないと思っています

国の試算は、多くの国民が死ぬまで比較的健康で介護保険や介護施設を利用することを考慮していないのは明らかだと思ってます

まとめ

老後2000万円問題について私の経験を交えて考察しました

私は65歳の時点で最低でも5000万円以上の資産がないと安心して老後を暮らすのは難しいと思っています

決して不安を煽っているわけではありません

健康を害して介護が必要になると想像以上に老後の生活にはお金がかかるのです

政府の試算である老後2000万円はあまりに心許ないと言わざるを得ないです

何故なら、日本は年金額が少なく、介護保険料や老人介護施設の利用料が高額だからです

更に高齢になると若い時に比べて比較にならないくらい医療費、薬剤費が高くなる可能性があるからです

地域にもよりますが比較的利用料が安い老健や特養などの介護施設は満床の施設が多く数十人から数百人の入居待ちというという話も珍しくないのです

よほど運が良い人以外、老健や特養への入居は無理ゲーなのです

ただ、65歳の時点で5000万円以上の資産を持っている高齢者は極めて少数でしょう

私自身も65歳までに5000万円の資産を作るのは到底無理だと思います

私のように中高年になってから慌てて老後の資産を形成するのはリスクの高い危険な投資にでも手を出さない限り無理というもの

やはり20代、30代から老後の資産形成を真剣に考えないと老後の生活は非常に厳しいと言わざるを得ない

節税になる積み立てNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などで積み立て投資を行うのは当然として、更に証券会社の普通口座で米国株式や世界株式を積み立てる必要があると思います

もしこの記事を読んでくれた読者が20代だったら65歳までに1億円、30代だったら65歳までに7000万円から8000万円の資産を形成することを目指して欲しいですね

老後を文化的に豊かに安心して暮らしたいならそれくらいの資産を備えるべきだと思っています

 

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