【書評】人間関係を半分降りる(鶴見済・著)は読み手を選ぶ書籍

生活

数十年前、著書の完全自殺マニュアルで一世風靡した鶴見済さんの最新刊、人間関係を半分降りるを読んだ

結論から申し上げるとこの本は読み手を選ぶ本であるということですね

人間関係を半分降りる(鶴見済・著)は読み手を選ぶ書籍

この日本社会に違和感なく溶け込んで上手く生きている人にとってはこの本は全く参考にならないだろう

一方、私のように常に人間関係に悩んでいる人には手放しで勧められるか?といえばそうでもない

なぜならば、人間関係に苦しむ人がこの本を読んだところでその人の悩みが解決されるわけではないからだ

ただ、綺麗事抜きで日本の人間関係を論じるこの本は人間関係に悩む人にある程度参考になるとは思う

人によっては全く参考にならないかもしれないし、非常に為になると感じる人もいるだろう

私は少なくともこの本を読んでそのような印象を持ちました

 

 

私が【人間関係を半分降りる】を購入した理由

この本を購入した理由は、私は絶えず人間関係に悩んでいる人間だからだ

職場の上司や同僚との人間関係は派遣社員の私にとって常に悩みの種だ

派遣社員は正社員と違い原則3年間しか同じ職場に居ることは出来ない(無期雇用という例外はある)

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だから短期間で職場を転々とすることになり、その度に新たな人間関係を構築することに非常に消耗するのだ

事実、私は非常に人間関係構築に消耗してきた

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関西に来てもう五年になろうとしています。派遣先を4回も変わり波乱万丈でしたが何とか生きてこれました(笑)。

派遣社員を勧めない8つの理由。待遇が悪いし単純作業が多くスキルが身に付かない。

また、高齢(80歳)の毒父親との距離感にもいつも悩んでいる

私は父親とは精神的にも物理的にもほぼ絶縁状態だ

関わっても面倒臭いだけの人間なので、本当は法的に絶縁したいところだが、悲しいかな、日本では民法で親子の法的絶縁は出来ないことになっている

私自身は毒父親と話したいことは何もないし彼のことに全く興味がないので全く会いたいとも思わない

2年前に父親が重度の関節リウマチに倒れて、一時的に介護を経験したがその時にこのクソ親父とは絶対に絶縁しないとダメだな、と強く思ったものだ

 

父親は実家の神奈川県に住み、私は兵庫県に住んでいる

物理的距離は十分すぎるほど遠いだろう

私は父親から離れるために兵庫県に来たわけではない

本当は土地勘のある関東で仕事を見つけたかったのだが、全く関東では仕事は見つからなかった

別に仕事を凄く選り好みをしていたわけではない

正社員は年齢的にも難しかったので派遣社員を中心に仕事を探しても関東では全く見つからなかった

仕事を探すエリアを関西まで広げたら関西(大阪)でたまたま仕事が見つかったから9年前に大阪に移住した

これが結果的に毒父親と物理的距離を取ることになり結果的には良かったと思っている

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【人間関係を半分降りる】で私に刺さった部分を紹介したい

ネタバレにならない程度に私が刺さった部分(文章)を紹介したい

”人間の本性は素晴らしい”は幻想

鶴見氏は、人間は醜い存在である、と綺麗事抜きに切り捨てています

私も全く同感です

私は子供の頃から、人間は素晴らしい尊いものだ、という綺麗事の嘘を教えられてきた

学校の授業やテレビドラマや映画や小説や漫画の世界では、人間は美しく尊い存在だ!というウソが前提で内容が成り立っている

映画や小説や漫画の世界は現実世界から離れたファンタジーの世界だから、綺麗事がまかり通るのは致し方ないと思う

しかし、学校で児童に、人間は素晴らしい存在、などという大嘘を堂々と教えるのは害悪でしかない

綺麗事ゼロの不都合な真実を教えるのが教育だと私は思っている

綺麗事を信じて世の中に出て働き始めたら、騙されて身ぐるみ剥がされるのがオチだろう

私も恥ずかしながら、30代前半くらいまでは、”人間は素晴らしいものだ、腹を割って話せばいつかは分かり合える”と思っていました

いま思いかえすと恥ずかしくて仕方ない

ただ、その後、色々経験を積んで痛い目に遭っているうちに、人間ってクソだな、と本気で思うようになった

ずる賢い同僚や上司に搾取される真面目な社員や、クソみたいな奴が管理職に登用されたり、全然他人の話を聞かないヤツ、全く分かり合えない奴らも多く見てきた

一部の聖人を除いて、人間は自分の利益しか考えていないゴミのような存在だと、私は確信しています

もちろん、私自身もそうです

だから、他人には全く期待しなくなりました

会社などは利益を追求する集団なのでイジメやパワハラがなくならないのが当たり前なのです

多くの大企業は、コンプライアンス相談室なるものを形だけ設けていますが、あんなものに期待してはいけません

株主や顧客に対して体裁を整えるだけの形だけの組織と思っておけば間違いない

個々の人間がゴミクソなのだから職場という組織や自治体や国家がクソみたいになるのはごく自然なことです

もし、貴方の周りには嫌な奴が全然いなくて素晴らしい人ばかりに囲まれて暮らしているのだったら大変にラッキーだと思います

その環境を大事にした方がいいですね

血縁は大事ではなかった

日本人は、血のつながりが非常に大事なのだ、と洗脳されてきました

学校でもそう教えているし、TVドラマや映画や小説も家族愛をテーマにした物語が非常に多い

マスメディアを含めて家族愛が大事であると国民を洗脳しまくっているのだ

なぜかといえば、そのように洗脳した方が国民を統治するのに都合が良いからだ

 

しかし、血縁を重視する価値観は、明治時代以降のもので江戸時代以前は血縁など大したものではなかったのだ

江戸時代以前は養子をもらうことは普通だったし、離婚再婚も多かったから、家族内に血のつながりがない人がいるのが当たり前だった

私自身も、父親が毒親だったし親戚もクソ野郎が多かったこともあって、血縁などクソ!だと思っているし、家族愛など全く信じていない

だから、多くの日本人のように結婚して子供を育てることに全く憧れがないのだ

日本の少子化は再起不能なほどに深刻になっているが、この理由の一つとして、婚外子を認めないことが大きいと思う

日本の少子化の原因と言えば、若手世代の貧困を思い浮かべる人が多いだろう

もちろんそれも大きな原因であることには違いないけど婚外子を認めないことも大きいはずだ

日本以外の先進国では殆どの国で婚外子を法的に認めているので行政からの様々な支援が受けられる

ところが日本の場合は、夫婦から生まれた子供でないと”正式な子供”として認められないので、行政の支援を受けることができない

これでは少子化が進んで当たり前だろう

様々な理由で結婚できないカップルは沢山いるはずだ

未婚カップルが子供を産んでも行政サービスを受けられる”子供”として認められなければ子供が欲しくても産めないだろう

日本ではとにかく時代錯誤の法律や価値観がいまだに跋扈しているから注意が必要だ

婚外子を認めないこと以外にも、戸籍制度、連帯保証人制度など、世界的には考えられないような全時代的価値観がいまだに跋扈している

先進国で戸籍制度がある国なんて殆ど無いことは知っておいた方がいい

マイナンバー(国民番号)があれば戸籍制度なんて不要なのは誰の目にも明らかだ

政治が戸籍制度に執着するのも、要は為政者達は”血縁が大事”だと国民を洗脳したいのだろうね

連帯保証人制度も全く同じで”血縁こそ命”という価値観に基づいているはずだ

私は何度も転職や転居を繰り返した人間なので、賃貸住宅や就職の時に当然の如く連帯保証人を求められることに非常にうんざりしている

こんな全時代的な制度ばかりではこの国が世界から取り残されてどんどん沈没していくのは当たり前だ

ある意味、鎖国していた江戸時代よりも現代の日本社会は全時代的な制度でがんじがらめで息苦しい社会であることこの上ない

日本には夫婦が生涯添い遂げる価値観は無かった

私が子供の時や若い時は、夫婦は一生涯添い遂げるのが当たり前、みたいな価値観が幅を利かせていた

今でも年配者を含めてこの価値観を信じている人が少なくないのではないか?

この価値観も日本に昔から存在したものではないのです

前述したように江戸時代以前は、離婚や再婚が現代日本よりはるかに多かったのですから

この価値観は明治時代以降に欧米から入ってきた価値観と言われています

しかし、その欧米では日本以上に離婚が当たり前の社会になっているので皮肉なものですね

日本も現在の若い世代を中心に離婚するのがもはや当たり前になっています

若い人だけではなく、夫の定年退職をきっかけに熟年離婚する老夫婦も急増しています

結婚して数年で離婚するなんて珍しくもなんともない時代です

私が子供の頃や若い時は、離婚が悪いもののように扱われていましたが、その価値観の方が異常なのです

20代で結婚して80歳以降まで死ぬまで添い遂げるなんて私だったら真平ゴメンですね

そんなものは美談でもなんでもない

人間は醜い生き物なんです

一緒に住んでいたらお互いに嫌な部分が見えてくるし時が経つにつれて嫌いになっていくのも当たり前でしょう

そんなことを我慢して結婚生活を継続して、”仮面夫婦”を演じることに何の価値があるのか?と言いたいですね

結婚しても配偶者以外の人を好きになるのは人間としてごく自然な感情でしょう

その感情を押し殺して無難な結婚生活を演じるのは非常に不自然といえますね

かつて、柳沢きみおという漫画家の”妻をめとらば”という漫画の中で、”多くの夫婦は憎しみ合っているか、互いを無視しているか、どちらかだ”というセリフがありました

 

 

このセリフには私は深くうなづいてしまったのをよく覚えている

私の両親がまさしくそうだったからです

私の子供の頃から両親は仲が悪く母親は父親の悪口ばかり言っていた。喧嘩が始まってエスカレートすると父親は母親に手を出すことも全然珍しくありませんでした

恐らくお互いに憎しみ合っていたのでしょう。

それでも離婚しなかったのは、母親は経済的に父親に依存し、父親は家事や子育てを母親に依存していたからでしょう

愛情はなくても、ある意味互いに利益があったから一緒に生活していただけの話です

私が結婚に全く思い入れがないのも、こういった経験が原因だと思います

追い詰められた時は笑ってしまうに限る

現代社会はストレスに溢れています

私も様々な悩み、どうにもならない事に悩み絶望を感じる時が日々の生活の中でしょっちゅうあります

最悪なのはどうにもならない事に悩みすぎて発狂したり自殺に追い込まれてしまう事だと思う

どうにもならない局面にまで追い込まれた時はとにかく無理矢理にでも笑うことが良いと、鶴見さんは主張している

Youtubeでもテレビでもいいから自分が好きなお笑い芸人のコントなどを見て緊張をほぐし笑うだけでいいのだ

こんなことをして何の意味があるのだ?と懐疑的な人も多いかもしれない

勿論、笑ったって状況が最悪の状況が改善するわけではない

しかし、自分の精神状態は大きく改善するのだ

笑いはどうにもならない悩み事がくだらなく思えてしまう効能があるのだ

末期癌患者には笑い療法が実際に導入されていて癌の症状が和らぐことが立証されている

要は笑いの効能は医学的にも証明されているのだ

お笑い芸人が人気なのは人間のストレスを低減する存在だからだろうと思う

最後に

鶴見済さんの最新刊、”人間関係を半分降りる”を紹介させていただいた

私は、この種の書籍を沢山読んでいるので、正直大きな目新しさは感じられなかったところだ

ただ、テーマの切り口は鶴見さん独特のもので、他の作家にはない説明の仕方が新鮮だった

また、鶴見さん自身、幼少期から生きづらさを感じていて、青年期には精神疾患を患った経験があるので、主張する内容には非常に説得力があるのは間違いない

何事もそうだが、自身の体験に裏打ちされない主張というのはどこか軽薄な薄っぺらい印象になるものだ

私はこの本を読んで改めて、人間は適度に離れて生活するのが大事だ、と確信しました

夫婦も友人も親子も職場の同僚や上司とも距離が近すぎるのは絶対に良くないのです

友人や親子はたまに会う程度でちょうどいいし、夫婦も別に一緒に住む必要はないとも思う

別居婚しているカップルも現在は珍しくなくなった

コロナ禍でテレワークが進んだが、これも人間を適度に遠ざける意味で非常に良いと思う

私は週三日出勤で、週二日テレワークの勤務形態だが、気の合わない上司や同僚と顔を合わせずに済むのは非常に楽だ

同僚や上司は気が合う連中ではないので狭いオフィス空間で一緒にいるだけでうんざりしてくる

狭いオフィスで毎日長時間顔を合わせていたら諍いが生じるのが当たり前なのだ

テレワークできる職種は経営者判断でどんどんテレワークを導入したら良いと思う

そのほうが企業の生産性が上がって業績が向上するのではないだろうか?